外国人に言わせると、日本人は一体何の権利があって、そんな立ち入ったことを質問するのか、と不快に思うそうです。それはこれに相当する挨拶習慣がないからです。
日本語のこの挨拶は行き先を詮索しているのではなく、単に親しい知人としていつも相手のことを気遣っていますよという親愛感の表明にすぎません。だから、この挨拶への答えは「ええ、ちょっとそこまで」といういいかげんな答えで充分で、「じゃ行ってらっしゃい」となるのです。
もし英米人が上の英語で問いかけてきたら、それは必ず行き先を問うた質問であって、単なる挨拶ではありません。
英語にも "Where are you off to?" "Just around." と言う日本語と同じ字句的意味の決まり文句はありますが、これは挨拶ではなく質問と拒否の答えなのです。
英米人に、「いつも主人が〜」「いつも子供が〜」式の日本式挨拶をしても、この日本的礼儀の心や感謝の気持ちは伝わらないそうです。自分のことが自分で言えない子供や夫の無能をさらすように映ったり、何か深刻な問題が背後にあると感じさせ、悪いイメージを与えると言われています。
英米人の妻たちなら、
「ともていいボスに恵まれている、と夫はいつも話しています」
(My husband is always talking about what a great boss he has.)
「夫はあなたの卓越した決断力を、ほんとうに心から賞賛しています」
(My husband really admires your decision-making ability.)
のように具体的な親切に対して、しかもあくまでも夫が感謝していることとして伝えるといいます。
この種のことばは、日本人も英米人も同じような発想をしていますから、大抵は気持ちも表現もよく伝わります。しかし、習慣が違うものもあるので注意が必要です。
たとえば、日本人は「この次に頑張ればいいじゃない」と言うことがありますが、これをそのまま英訳して "You only have to try your best next time." と言ったら、英米人にとっては慰めにも励ましにもなりません。なぜなら、この英語は今回頑張らなかったことの非難になるからです。
こうした場合、英米人なら、 'I'm sure you'll do fine next time.'(きっと、この次はうまくやれるわよ)と言うでしょう。
文末に 'now' が付いていますから、過去のできごとを話題にしているのではありません。「先に食事になさいますか」と今からの希望を聞いています。
文末に 'now' が付いていなくても、文脈により同様に解釈しなければならないケースはよくあります。
助動詞や一般動詞の過去形には丁寧性があり、Do you wish to take a meal now? の 'Do' を 'Did' にすることで、「先に食事にする?」が「先に食事になさいますか?」くらいに丁寧な言葉づかいになります。
他の例としては、例えば、立入禁止区域方面に向かっている人に警備員が、"Where do you want to go?" と聞くと「どこに行きたいんだ?」と咎め立てする感じがします。それを和らげるために動詞を過去形にして、"Where did you want to go?" と言うと、「どちらへ行かれたいのですか?」くらいに丁寧な響きになります。
英米人は助動詞や一般動詞の過去形を多用します。みなさんも映画などでよく注意してご覧になってみてください。
"You must have another sandwich." は、「ぜひ召し上がっていただきたいわ。」ほどの客への丁寧なもてなしの言葉です。
相手に負担となることを言わなければならないときは丁寧なことば使いが必要ですが、相手にとって利益になることを言うときは、原則として、ことばを特に丁寧にする必要はありません。
遠慮して差し出されたサンドイッチに手を出そうとしない相手に対して勧めることばとして次のような表現があります。何れも命令文ですが丁寧なもてなしの言葉なのです。
※使い分けのヒント | |
You must have another sandwich. | 「是非食べて」の感じ |
Do have another sandwich. | 〃 |
Have another sandwich. | 〃 |
Help yourself. | 「遠慮しないで…」の感じ |
中学校で、"Would you mind〜" は丁寧な言い方だと習いましたね。
確かにこの聞き方は相手の意志を尊重した丁寧な表現であるには違いありません。しかし、残念ながら相手に勧める表現としては不適切なんです。
なぜならこの英語は「悪いけど、食べてもらえませんか?」という意味になるからなのです。
'mind' は「嫌だなぁと思う」という意味です。つまり、"Would you
mind 〜?" は相手の利益になることではなく、負担になることを頼むときの表現なのです。
ですから、負担を聞きいれる場合の返事は "No, I don't."(「いいえ、かまいませんよ。」)となります。
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